原因不明の海面上昇によって、地表の多くが海に沈んだ近未来。
幼い頃の事故によって片足を失った少年・斑鳩夏生は、
都市での暮らしに見切りを付け、海辺の田舎町へと移り住んだ。
身よりのない彼に遺されたのは、海洋地質学者だった祖母の船と潜水艇、
そして借金。夏生は“失った未来”
を取り戻すため、
祖母の遺産が眠るという海底の倉庫を目指して潜る。
そこで見つけたのは、棺のような装置の中で眠る不思議な少女―アトリ。
彼女は、人間と見紛うほどに精巧で感情豊かなロボットだった。
海底からサルベージされたアトリは言う。
マスターが残した最後の命令を
果たしたいんです。
それまで、
わたしが夏生さんの足になります!
海に沈みゆく穏やかな町で、少年と
ロボットの少女の、忘れられない夏が始まる―。